ミノキシジルはAGAに効く薬なのか

AGAとは男性型脱毛症の事を言いますが、近年盛んに語られるようになってきた言葉です。何種類もある脱毛のパターンの内の一つであり、世の中の全ての男性で薄毛の人、がAGAというわけではありませんが、特に薄毛の男性の場合はかなりの確率で該当する人が多く、特に若くして薄毛の人に多いのも特徴と言えます。原因は男性ホルモンとヘアサイクルの乱れであると言われており、男性ホルモンであるテストステロンは、体内の還元酵素の働きで、ジヒドロテストステロンというホルモンに変換されますが、このホルモンが毛乳頭細胞にある受容体に結合することによって、髪の成長を抑制してしまうと言われています。AGAの原因は、脱毛部分の頭皮を解析すると、多量のジヒドロテストステロンが検出されることから男性ホルモンに起因するものと考えられており、実際に当該物質が多量に発生する状況を作っているものとしては、遺伝によるもの、ストレスによるもの、不規則な食生活、睡眠不足、運動不足など多くの原因の可能性が挙げられていますが、いずれも男性ホルモンに由来して生成するジヒドロテストステロンに起因して起こると考えられることから、AGA治療を専門にしている病院での治療は、当該物質の生成を抑制するフィナステリドなどの医療用医薬品の投与が行われることが多いようです。

一方、ミノキシジルは最も歴史の長い育毛剤主成分であり、1960年頃から高血圧対策用製品として登場し、1980年ころから育毛効果があることから育毛剤の主成分としての利用が始まりました。2000年代に入り、日本皮膚学会により、最高レベルの育毛効果を持つ成分としても認定され、育毛効果があることは様々な臨床試験によっても実証されてきています。効果のメカニズムについては、完全に明らかになっているわけではありませんが、元々血管拡張剤として高血圧対策用として使用されていましたから、頭皮の血行不良の改善に効果を発揮すると考えられ、更にはその効果の延長で、毛乳頭細胞や毛母細胞の活性化につながるとする説は、ある程度納得できるものであると思われます。従って、男性ホルモン起因の薄毛に限らず、女性の高齢化に伴う薄毛など、他の要因によって引き起こされる薄毛にも効果があると考えられ、男性ホルモン由来の薄毛対策用の経口薬であるフィナステリドが、前述のジヒドロテストステロン生成の抑制を狙った成分であるのに対して、ミノキシジルはこれとは異なる原理で育毛効果を発現すると考えられることから、両者を併用する事で相乗効果的に作用することも期待されます。
しかしながらミノキシジルを主成分とする育毛剤には、副作用の懸念もあります。当該主成分を含有する育毛剤の基剤であるプロピレングリコールに対するアレルギー反応によるかぶれ、塗布した箇所の肌荒れやニキビ、重い低血圧、意図しない過剰の増毛効果、下肢、顔、手足のしびれやむくみ、急速な体重増加などがありますが、さらに当該製品との因果関係は不明としながらも、重篤な、命にかかわる循環器疾患の事例も報告されており、その他の市販の育毛剤よりも、使用にあたっては注意が必要と言えます。2009年の改正薬事法施行によって、市販のミノキシジル含有育毛剤は、第一種医薬品に指定されており、法規制は強化されています。

このように、様々な副作用の心配がある点で注意が必要ではありますが、ミノキシジルが顕著な育毛効果を認定されている数少ない成分であることは確かであり、副作用の懸念は、はっきりした効果の裏返しでもあります。単独もしくは他のメカニズムで効果を発揮する成分との併用によっても、AGAに対して改善効果を発揮することが期待でき、今後ますます使用法や副作用回避の検討が進むことが期待されます。

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